はじめに:「ハンドドリップは難しい」と思っていませんか?
「苦くならないコツはありますか?」
「粗挽きのほうがいいですか?」
「土手は崩しますか?崩しませんか?」
「淹れてるところ見せて!」
はじめまして。
以前、コーヒー屋さんでバリスタとして働いていたとき、お客さんからよく聞かれた質問です。
※「土手」とは、お湯を中央に注いだとき、フィルターのふちのまわりに、コーヒー粉がドーナツ状に残った壁のことです。
そのたびに、自分の感覚を言葉にして答えていました。
同時に、「コーヒーは難しい」「ハンドドリップは職人技」と思われていることも感じていました。
でも、練習と知識があれば、ドリップの技術は身につきますし、理解できます。
もっと気軽に楽しんでほしいと、ずっと思っていました。
最近は、趣味で自宅コーヒーを淹れています。
そして、コーヒーの奥深さと面白さに、あらためて気づき始めました。
このブログでは、その中で見つけた、自宅コーヒーを楽しむための考え方をお伝えします。
では、ハンドドリップは、何をどう分けて考えればよいのでしょうか?
結論:ハンドドリップは、前提(何を使うか)・操作(どう淹れるか)・環境(どんな環境で飲むか)の3つに分けて考えられます。分けると、「昨日と味が違う理由」を探せます。
お店の味にならなくても、失敗ではありません
家で飲むコーヒーに、お店の味を求める必要はありません。
プロのバリスタの再現をしなくてもよいのです。
家庭料理に、レストランの完成度を求めないのと同じです。
お店の味を目指してはいけない、という意味ではありません。
ただ、お店の味にならなくても、失敗扱いしなくてよいのが、自宅コーヒーの良さです。
それでも、コーヒーが好きになると、こんな疑問が出てきます。
- 今日のは好きな味だけど、なんでだろう?
- 昨日と味が違うのは、なんでだろう?
この「なんで」を、自分の言葉で説明できると、コーヒーはもっと楽しくなります。
そのための第一歩が、淹れ方を分けて考えることです。
コーヒーの抽出には、分かっている理論があります
抽出とは、粉の中の成分が、お湯に溶け出していく現象です。
この現象は、これまでに、くわしく調べられてきました。
たとえば、粒の表面から先に成分が出て、内部の成分は時間をかけて出てくる、と説明されています。
湯温や挽目によって、成分の出る速さや量が変わることも、分かってきています。
一方で、すべてが解明されているわけではありません。
たとえば、湯温が味に与える影響は、条件をそろえると小さかったという報告もあり、まだ結論が出きっていない部分があります。
このブログでは、分かっていることと、まだ分かっていないことを、分けて書きます。
分かっている部分だけでも、ドリップは、感覚だけに頼る不思議なものではなく、分けて考えられるものです。
このブログは、理論→操作→器具の順に進みます
理論は、知らなくてもコーヒーは淹れられます。
ただ、知っていると、自分で工夫を考えられるようになります。
このブログでは、次の順で書いていきます。
- 理論:抽出の仕組みを、4つの基本変数で整理します
- 操作:湯温や挽目などの操作が、どの変数に効くのかを説明します
- 器具:ドリッパーやミルなどの器具が、どの変数を動かしやすくするのかを説明します
好みは人それぞれです。
このブログは、正解を決めるのではなく、自分の好みに近づくための考え方を示します。
連載のほかに、訪れたお店やイベントの感想も、ときどき書きます。
ハンドドリップは、3つに分けて考えられます
ハンドドリップは、次の3つに分けられます。
(図:前提・操作・環境の3つの関係)
| 3つの分け方 | コーヒーでは | 料理にたとえると |
|---|---|---|
| ① 前提(何を使うか) | 豆、水、道具 | 食材、調理道具 |
| ② 操作(どう淹れるか) | 湯温、挽目、注ぎ方、粉とお湯の比率 | 火加減、手順、分量の決め方 |
| ③ 環境(どんな環境で飲むか) | カップの形、飲むときの温度 | 盛りつけ、皿、食卓の雰囲気 |
① 前提:淹れる前に決まっているもの
前提は、何を使うかです。
- 豆の性質(焙煎度、鮮度など)
- 水の性質
- 道具(ドリッパー、ミル、ケトルなど)
淹れる前の段階で、味の出発点が決まります。
道具は、何を選ぶかは前提、どう使うかは操作です。
選んだ道具は、「操作」を通じて、抽出に関わります。
② 操作:お湯と粉をどう扱うか
操作は、どう淹れるかです。あなたが実際に触るものです。
- 湯温(お湯の温度)
- 挽目(豆をどれくらい細かく挽くか)
- 注ぎ方(速さや高さなど)
- 粉とお湯の比率(カップの濃さを決めます)
「ハンドドリップらしさ」や、淹れる人の考え方が出るところです。
操作は、抽出のどこに効くのかで整理できます。
次回から、その整理に使う4つの基本変数を説明します。
③ 環境:どんな環境で飲むか
環境は、どんな環境で飲むかです。
- カップの形
- 飲むときの温度
環境は、抽出そのものではありません。
ただ、味の感じ方には関わると言われます。
たとえば、カップの形や、飲むときの温度で、香りや味の感じ方が変わった、という報告があります。
つまり、味が違うと感じても、抽出が変わったとは限りません。
ほかにも、空間や時間帯など、飲む環境はいろいろあります。
くわしくは、別の記事で扱います。
「昨日と違う理由」を探せます
昨日と今日で味が違うと感じたとき、原因の候補を、3つに分けて探せます。
- 前提:豆を替えた。袋を開けてから日がたった
- 操作:湯温を変えた。注ぎ方が違った
- 環境:別のカップで飲んだ。飲むタイミングが違った
原因は、1つとは限りません。
また、分けて考えても、味がどれだけ変わるかまでは予測できません。
それでも、どこを疑えばよいかの見通しは立ちます。
ブラックボックスのままでは、この見通しは立ちません。
試してみよう:一杯を3つに分けてメモ
いつもの一杯を、3つに分けて、メモしてみてください。
- 前提:豆、水、道具
- 操作:湯温、挽目、注ぎ方、粉とお湯の量
- 環境:カップ、飲むときの温度
測っていない項目は、「だいたい」でかまいません。
最後に、味の印象を、一言で書き添えます。
正解はありません。自分の好みに近づくための材料集めです。
まとめ:ドリップは、分けて考えられます
- コーヒーの抽出には、理論的に説明されている部分があります
- このブログでは、理論 → 操作 → 器具の順に、自宅コーヒーを工夫する考え方を書いていきます
- ハンドドリップは、前提(何を使うか)・操作(どう淹れるか)・環境(どんな環境で飲むか)に分けて考えられます
今日の一杯が昨日と違うとしたら、前提・操作・環境の、どこだと思いますか?
この記事は、連載の入口です。
次回から、「操作」が抽出のどこに効くのかを整理していきます。
コーヒーを、少しだけ簡単に。
でも、より深く楽しむために。
次回予告
次回は、4つの基本変数を紹介します。
湯温を上げる。挽目を細かくする。注ぎ方を変える。
これらの操作は、抽出の何を動かしているのでしょうか?

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